このガイドブックは東京都小金井アーチェリー協会の木村様の協力をもとに作成されています。

 

        FITA審判員 ガイド ブック

バージョン 4
200281
(抜粋)

     

2002年8月1日に更新されたFITA JUDGE GUIDE BOOK Version の主要な部分の翻訳です。 このGUIDE BOOKFITA競技規則に従い、作成されたものです。 したがって、日本の競技規則や国内競技会の運営と異なる点もありますが、競技規則の趣旨や審判員の心得を理解する上で良い資料であると思い、拙いですが翻訳しました。 
今回の追加変更部分はイタリックで表示しました。 


全日本アーチェリー連盟競技規則を参照しながらお読みください。

お役に立てば幸甚です。

原文は、FITAホームページ  http://www.archery.org 

                                  FITA publications

     Judges Manual version 4.0

です。


        


                          目 次
         (項目をクリックしてください。 本文にジャンプします。)


第1章 概説
 1.1  理念
  1.1.1 オリンピック宣誓
  1.1.2 FITA審判員
  1.1.3 審判員の国籍
 1.2    概念
 1.3    するべきこと、してはならないこと

第4章 検査
 4.3  弓具検査
  4.3.1 検査の手順
  4.3.2 コンパウンド・ボーとその用具
  4.3.3 ベアボー

第5章 競技
 5.1 審判員としての重要な考え方
 5.2 再検査
 5.3 矢の点数
  5.3.1 エラーが2重に発生した場合
 5.5 ターゲット・アーチェリーの審判手順
  5.5.1  跳ね返り矢、貫通矢、垂下がり矢
  5.5.2  弓具故障 / 医療問題
  5.5.3  的中孔の印
  5.5.4  スコアーカードの訂正
  5.5.5  行射開始前、終了後の行射
  5.5.6  音響信号
  5.5.7  時間警告信号
  5.5.8  標的での審判員の位置
  5.5.9  その他の作業
  5.5.10 射線上の望遠鏡
  5.5.11 3mライン
  5.5.12 射線上のコーチからの指示
  5.5.13 電子機器
  5.5.14 競技の取消し
 5.6 フィールド・アーチェリーの審判手順
  5.6.1  時間制限の適用
  5.6.2  距離の測定
  5.6.3  弓具故障
  5.6.4  得点の訂正
  5.6.5  セカンド・コール
  5.6.6  貫通矢、跳ね返り矢、等
  5.6.7  双眼鏡の使用
  5.6.8  行射位置

第6章 決勝戦
  6.3.2  団体戦審判員職務
   6.3.2.1 ライン審判員の職務
   6.3.2.2 違反

第8章 付録
 8.8 アンマークド・ラウンドで許可されるもの、されないもの



              


FITA審判員 ガイド ブック (抜粋)
  

第1章    概説 

1..     理念

1.1.1.             オリンピックの宣誓

   理念と基本的な考え方は下記のオリンピック役員宣誓に従っている。

すべての審判員と役員を代表し、オリンピック競技会において、真のスポーツマンシップに則り、公正にかつ規則に従って役員の任務を果たすことを誓います。

   

1.1.2.             FITA審判員

FITA審判員になることは名誉なことである。 成功は審判各人の誠実さ、性格の良さ、知識の深さ、思慮深さにかかっている。  

従って、審判員は競技会の奉仕者であって、その主人公ではない。 あなた方は、適用する規則を完全に熟知する義務があり、高圧的や権威的であってはならない。 これは時には実行するのが困難なことでもある。

常に心を開き、選手の説明を注意深く聞き、幅の広いバランスのとれた態度を保つよう心がけることが大切である。

   最近、審判員や審判手順に大きな注意が払われてきている。 従って、審判員は世界で共通な審判を行うために、新しい規則を実施する責任がある。 これにより、世界中共通な競技方式と行射方法で競技を行うことが出来、競技の公平さに対する選手の信頼を得ることに貢献するものである。

 

1.1.3.             審判員の国籍 

   審判員として仕事をしている間は、審判員はどの加盟連盟も代表するものではない。 従って、あなたの国籍を示すピンやバッジを付けてはならない。 正式なFITAのピンや組織委員会から提供されたピンは当然着けてもよい。 


      1.2. 概念

   競技会での役員の役割は、各選手が最高の成績を残せるよう、順調な競技会の進行に勤めることである。

   不幸にして選手の中には、さまざまな機会を利用して、自分の順位を上げるために得点を上げようとする選手がいる。 あなたはこれに同意してはならないが、無視するのは賢明ではない。

   FITAが作成した規則を公平且つ誠実に適用する努力を示すためには、役員の立場として、時には確固たる姿勢を示すことも必要である。

   そうするためには、少数の選手が自分の点数を良くすることが出来るような機会についても、審判員は気を配らねばならない。 

自制と公平さの手本を示せ。 選手に貴方自身の冷静さを失わせるようなことを、決してさせてはならない。

   規則を熟知し、規則に対する最新の解釈もよく知らねばならない。 審判員は常に最新の規則を知り、“古い”規則を適用してはならない。
もし、的面での矢の得点が不確実であれば、疑わしいときは選手に有利に計らう。 全ての選手の権利を擁護し、同時に規則を確実に適用すること。 
アーチェリーの競技生活が長く、また確実に貴方よりも遥かに規則に詳しい選手にしばしば出会うことがある。 もしそのような選手に出会い、厄介な争いが起こりそうであれば、これを避ける心理的な手段を注意深く取るべきである。 最初に、正しい最新の情報を持っていることを確かめ、不確かな決定をする前に他の審判員と相談し、確実に正しい決定をするよう努めよ。
時には、ある疑義に関して、全ての人を満足させるような解決策を見出すことが困難な場合がある。 このような事が発生したら、全審判員が集合する迄最終的な決定を延期し、その後協議して関係者に明白な説明を行うべきである。

要は、審判員は十分な情報が得られ、前向きに討議し、必要なら選手を教育し、礼儀正しく、決定に対しては絶対確実でなければならない。 選手は点数を競っているのであり、選手は良い競技を望んでいることを忘れないように。


  1.3     するべきこと、してはならないこと

   これの完全なリストを作ることは不可能である。 参考となる考え方は、貴方の行動が選手、FITA、貴方自身、同僚の審判員から信頼されることである。

  すべき事 
・1 審判員の制服を着る権利に対する誇りと、競技会によい貢献ができることを目指して任務に付くこと。 
・2 貴方自身が来客を迎える主催者であると考えること。

・3 熱心で、礼儀正しく、友好的であること。

・4 競技規則を公平に、常に変わることなく、的確に適用すること。
・5 選手、チーム役員、来客、観客、報道機関、同僚の役員全てに丁重に支援を申し出でること。

  してはならない事

・1 貴方の主な任務である競技会から注意を逸らしてはならない。
・2 矢の採点や弓具検査等の役員任務に携わっている時、喫煙や飲食をして選手に失礼だと思わせてはならない。
・3 任務に携わっている時、選手や他の役員と長話をして、与えられた任務に充分な注意を払っていないと、思わせるような事をしてはならない。
・4 安全に関する問題以外に、選手の注意を引いてはならない。 安全に関する問題以外は、全ての役員はチーム・キャプテン(もし存在していれば)を通して、選手に伝えることが望ましい。
・5 競技前及び競技中は、射場の近辺でアルコール飲料を飲んではならない。
・6 仕事中はカメラやウォークマンを持ち歩いてはならない。 (任務についていない時に、写真を撮るためにバッグに入れて持ち歩くのは差し支えない。)

選手、観客、役員、報道機関に貴方が与えるイメージに気を配り、行動すること。
常に常識こそが貴方の指針である。

   

第4章    検査 

 

4.3.   弓具検査
4.3.1.             検査の手順 
全ての選手は弓具検査を受けなくてはならない。
審判員は各部門の規則やそれに付随する規則の解釈を熟知していなければならない。弓具検査の基本的な方法は次のようである。

・1 弓の外観全体を調べ、一般的なものと異なる点をメモする。 弓は弦を自分に向け、ハンドルに最も近い部分のリムを手で持つ。 決してグリップを持ってはならない。 貴方の手に汗や日焼け止めクリーム等が付いていることがあり、選手はグリップが汚れることを好まないものである。 
最近、リカーブボーにブレースの付いたハンドルを見かけることがある。 (トルクを避けるために)ブレースは腕や手首に触っていないことを確認する。
 
フィールド・アーチェリーでは、距離を推測する(的紙の大きさを測る等)ことが出来る可能性のあるような付加物、或いはその目的のためにのみ加工されたものが無いことに注意する。 これは各部門共通である。

・2 サイトを調べる。 光ファイバー、フード、チューブ等は選手から標的に向かって2cm以内とする新しい規則ができた。 この制限は弓を水平に保つためにサイトを利用することを避けたことである。 光ファイバーが2cmより長く、その他端が選手の視野に入らなくても、光ファイーバを曲げる位置が選手から標的に向かって水平方向に2cmを超えてはならない。
 フィールド・アーチェリーに関しては、付録8
.
JGを参照。
・3 スタビライザーは、他の選手の邪魔にならないことを確認するフィールド・アーチェリーでは、距離、的面の大きさや角度の推測を助けるものでないこと。もし、振り子タイプのスタビライザーが使用されていれば、角度の推定ができるような目盛が付いていないこと。 

・4 アローレストとプランジャーを調べる。 
 フィールド・アーチェリーでは、4
.. ベアボーを参照。
・5 弦とその付属物を調べる。
 フィールド・アーチェリーでは、4.. ベアボーを参照。
・6 矢を調べる。 シャフトの直径は9.3mm以内に制限された。 23xxのサイズで生産されているシャフトで、9.3mmルールで使用できるものは、2312,2314,2315である。 2317は不可である。ポイントは、0.1mmだけ大きくても良い (9.4mm)。
・7 タブ或いはグローブを調べる。 ベアボー選手には特別な制限があり、競技規則に注意。 競技規則第407条第5項参照。 もし、タブ等に触る時は、手が汗や油の汚れに注意。
・8 双眼鏡を調べる。 距離測定のための装置(目盛や電子装置の組み込み)が無いこと。 フィールド・アーチェリーに関しては、付録8
.JGを参照。
・9 チーム役員及びメンバーが同じ色で同じスタイルの服装を着用していること。
 時々、チームのコーチが選手の色と組織名が同じだが、多少模様の異なるものを着用していることがある。 時にはコーチが古くて色あせたユニフォームを着用していることがある。 理由によっては、これは許容範囲の内である。 
フィールド・アーチェリーでは悪天候で相応な服装が必要な時は、常識的に規則を適用すること。

4.3.2.             コンパウンド・ボーとその用具 
コンパウンド・ボーはその目的及び趣旨として、基本的にアンリミテッドである。
唯一の例外は次のとおりである。 ドロー曲線のどの部分においても、60ポンドを超えてはならない。 弓、サイト、レストに電子的なものを使用してはならない。 レストのプレッシャー・ポイントは弓のピボット(ハンドルの一番窪んだ処)から6cm以上後方にあってはならない。 これは概略で、詳細は競技規則を参照すること。 
コンパウンド・ボーの強さを調べるためには、公差1ポンド以下のばね秤を使用する。 弓具検査の前に、用意された全ての秤で実際に弓を引いて比較し、最も正確と思われる秤1本を使用して弓具検査を行う。 数人の審判員が複数個の秤を用いて検査してはならない。 もし、計測値が最高制限値(60ポンド)との差が1ポンド以内であれば、別の秤でもう一度検査を行うことが望ましい。 弓は審判員自身が引いてはならない。 選手に行わせること。 この時、秤を真っ直ぐに引かないと、正しい値が表示されないので注意が必要である。 選手は手首を真っ直ぐに伸ばして引いている事に注意。 
残念ながら、競技中にスポット検査をすると、基準値を超えているものが発見されている。 不正を防ぐために、このようなスポット検査を行う事は大変重要である。
コンパウンド選手のその他の用具、矢等は例外なくFITAの競技規則に従っている事。
フィールド・アーチェリーに関しては、コンパウンド選手にも距離のみを推測できる装置については、他の部門と同様に制限がある。

4.3.3.             ベアボー 
ベアボー部門は公式にはフィールド競技のみである。 国内競技では、しばしばターゲット競技にもこの部門の競技が行われることがある。 規則の詳細は競技規則を参照すること。 定義のとおり、この部門の弓は裸の弓で、弦を張らない状態で12.2cmの輪を通り抜けねばならない。 スタビライザーの使用は禁止されている。 
最近、ベアボー用のレストの取り付けについて、議論が交わされた。 主な点は、プランジャーのプレッシャー・ポイントはハンドルのピッボトの上になければならない。 (オバードローでないこと。 ただし、選手がハンドルのプラスチックや木のグリップを取り外した場合は、2cmまでは許容される。) レストの通常の取りつけはリカーブ・ボーと同様に許容される。

その他:

- 弓は照準を助けるようなデザインや印が有ってはならない。 レストも同様である。
-
 弦のサービングの末端は、フルドローした時選手の視野に入らないこと。 これは照準の助けとなり得るからである。 もし、視野に入るか疑問であれば、選手に弓を引いて貰って確認する。 そして、練習中や競技中に選手の本当のアンカーの位置を確認する。
-
 弦やサービングには、弦上で引き手の指の位置を決める助けになるような印はないこと。 
-
 タブの印や縫い目には制限がある。 競技規則第407条第5項参照。 
      

第5章    競技

5.1.   審判員としての重要な考え方

競技を成功裏に進めるためには、多くの人の努力を結集させることが必要である。 競技進行の成否は、我々審判員がチームとして効果的かつ効率よく作業する能力に大きく依存している。 審判団のメンバー間に意見の相違が生じることもあるが、その場合は冷静に、内部で作業を進める。 審判員が誤りを犯した場合も同様である。 冷静に問題点を解明し、その後必要な解決策を取る事が重要である。

見解の相違が解決されたら、統一見解を発表する。 そうしなければ、我々に寄せられている権威と尊敬は失われてしまう。

審判員は全ての規則に対して同じ程度の厳しさで、全ての選手に対しては同じ程度の公平さで処理しなければならない。 規則は我々役員が作るものではなく、また我々が規則を適用するか否かを決めるものでもない。 全ての規則は公平に又公正に適用されねばならない。 そのようにすることに誇り持ち、尊大や高圧的であってはならない。

5.2.   再検査

競技中、選手の弓具を見て、不正な器具の使用を調べることは非常に重要なことである。 この時に、双眼鏡、サングラス、目覆い等が規則に合致していることを確認する。 コンパウンド・ボーの強さの現場検査も必須である。 しかし、この検査に当たって、競技会の順調な進行を妨げてはならないし、選手を当惑させてもならない。

5.3.   矢の点数
的面に刺さっている矢の点数を判定することは、審判員にとって最も重要で、しかもしばしば責任を要求される仕事である。 貴方がこの重要な任務を専門的に遂行するなら、選手から確実に尊敬と信頼を得るだろう。 判定する矢が誰のものであるかと決して聞いてはならないし、この矢の判定をするのは非常に難しい等と言ってはならない。 貴方が、矢の確認とその点数以外のことを言うべきではない。 “矢が入っている”、“入っていない”とか“10点と思う”等と言ってはならない。 貴方が下した決定の結果(点数)を、自信を持って告げること。
従って、貴方は正しい方法で問題に対処しなければならない。 即ち、貴方は拡大鏡で問題の矢を両側から見なければならない。 矢の位置が、高い得点帯か低い得点帯にあることが明白であっても、拡大鏡を使用すべきである。 貴方の仕事に対する専門的な態度が、貴方に信用と名声を与えるのである。 矢の点数を判定する時は、的面や矢に触れないようにして出来る限り矢に対して直角の方向から見なければならない。

           正しい方向 正しい方向
                         誤った方向     誤った方向
 
得点帯の分割線が欠けている場合は、時には的面の真正面から見ることが必要な時もある。 その方が失われた円周の推定に容易である。 これは、拡大鏡を使用して、矢の両側から見た後に行うべきである。 2点と3点の間及び4点と5点の間には、分割線はない。 しばしば、多くの選手が、黒色の得点帯内の濃い部分を見て、4点を5点と主張することがある。 これは、2つの色の重なった部分であって、この部分は4点である。
判定には次のことをガイドラインとするのがよい。
    
もし問題の部分の分割線が欠けているか、矢によって歪んでいる場合は、元の円周の形を想像すること。
     判定をするのに時間を掛け過ぎないこと。 確信が持てない場合は、高いほうの点数とする。 疑わしい場合は選手の有利なほうに判定する(benefit of doubt)ことを忘れないように。 
     判定の最終結果を決定したら、矢の得点を告げて標的から後退すること。

もし、その選手やその標的また競技に参加している他の選手が、貴方の判定に疑問がある時は、2人目の審判員、必要なら3人目の審判員を呼び、多数決で判定を決めることができる。 2人目及び3人目の審判員には、貴方の判定を知らせてはならない。 二人目の審判員の判定が貴方の判定と同じであるか、又三人目の審判員を呼ぶのかを確認してから標的を離れること。 審判員の最終決定がスコアーカードに正しく記載されることを確認するためである。
フィールド・アーチェリーでは、決勝戦を除くと矢の判定は一人の審判員が行う。

5.3.1.             エラーが2重に発生した場合    
インドアーやフィールド競技では、三つ目的面を使用する。 同じ的に2本の矢が的中した場合
,
低い点数の矢の得点が採点され、もう1本の矢の得点はミス(M)となる。 
時に、選手がもう1本の矢を行射し、その的に4本の矢が的中することがある。

こうする事により、選手は2つの誤りを犯すことになり、これに対して適切な処置が必要となる。 例を紹介する。  
選手が一番上の的面に10点を、真中の的面に10点と9点を行射した。 選手は3射したので、ここで行射を終わるべきである。 得点は10―9―
M
である。 もし、この選手が4本目の矢を行射し、一番下の的面の9点に的中したら、彼の得点は 10−9−9−Mである。 しかし、4本行射しているので、得点は低い方から3本、即ち9−9−Mとなる。

    

5.5.   ターゲット・アーチェリー審判手順

5.5.1.             跳ね返り矢、貫通矢、垂下がり矢


跳ね返り矢

もし、その的の選手が1人であれば、行射終了の合図までに行射を終える。
2人以上の選手が行射している場合は、行射を直ちに中止する。
用意された旗等で合図する。 或いは他の方法で合図してもよい。
審判員は問題を正確に確認するために、射線に行く。
審判員はウェイティング・ラインに戻る。 射線上に選手がいなくなれば、射線に進み、DOSに問題の発生を知らせる。 審判員はDOSに向かい、了解されるまで合図を送る。 射ち残した矢の本数を知らせる。
跳ね返り矢をとなった選手(またはチームキャプテン或いは決められた役員)と審判員が標的に行く。 審判員はその矢の落ちている位置を考慮して、跳ね返り矢であるか否かを判定する。 跳ね返り矢が的面に残した痕跡を確認する。 痕跡が確認されたら、審判員のノートにその点数を記入し、矢の残した痕跡にマークを付け、その矢を的台の後ろに置く。 マークを付ける前に、審判員は的面に刺さっている矢で、採点時に点数が問題になりそうな矢があるか確認する。 もしそのような矢があれば、マークを付ける前に、審判員は自分のノートに矢の点数を記入する。 もし、マークの付いていない傷跡が的面に2個以上あれば、その矢の点数は低い方の点数となる。
もし、射ち残した矢があれば、次のエンドが始まる前に行射して、そのエンドを終了する。 採点時に審判員はその標的に行き、的面から跳ね返った矢の得点を確認する。

貫通矢
貫通矢に対する手順は跳ね返り矢と同じである。 その的の他の選手は、貫通矢が識別し処理されるまで待機し、その後行射を再開する。 審判員はDOSに合図を送り、その選手とともに標的に進む。 審判員は先ず、矢が地上にあるか又はノックがマットに埋まっていて見えないかを確認する。 審判員は矢が貫通していることを確認した後、的中孔とその点数を確認する。 その後、矢がマットに完全に埋もれている場合は、矢を的面に押し戻す。 公平な判断をするために必要と認めた場合のみ矢を的面に押し戻す。 矢がマットに入った方向と正確に同じ方向に、細心の注意を払って矢を押し戻す。 審判員は、採点の時に点数が問題になるような矢が無いことを確認する。 その他の手順は跳ね返り矢と同様である。

ぶら下がり矢
矢がマットに十分に刺さらないで、的面にぶら下がった場合は、その矢が落ちないようにするために、その的の選手は行射を中止する。 
その後の手順は貫通矢と同じである。 


    5.5.2.             弓具故障 / 医療問題

   エンド中に弓具破損が発生したら、選手は合図して審判員を呼ぶ。

審判員は選手の所に行き、故障を確認する。

   審判員は射ち残した矢の数と修理に要する時間の予測を選手に聞き、ウェイティング・ラインに戻る。 

   シューティング・ラインから全ての選手が後退する前に、審判員はシューティング・ラインに進み、DOSに弓具故障の発生を知らせる。 これはDOSに矢取りの合図を出させないためである。 もし選手がそのときまでに弓具の修理が終わり、残りの矢を行射できる状態であれば、審判員は行射すべき矢の数をDOSに知らせる。 もしその時点で選手が行射できない状態であれば、審判員はDOSに矢取りと採点を行うよう合図する。 いずれの場合も、残りの矢の行射は、可能な限り早い時点で行う。

   弓具故障の措置は、予測不可能な故障に対して、部品の修理又は交換を選手に許すものである。 弦切れ、ノックの破損、サイトの緩み、タブの破損、クリッカーのずれ等は弓具故障である。 予備に持っている弦にサービングの取付け、矢羽の取り替えを選手に許すものではない。 

   1999年の総会では、弓具故障に際して最大15分を与えることとした。 これは重大な故障に対して適用されるもので、その距離の最終エンドの後で、射ち残した矢を行射させるものである。 15分の時間計測はないが、各エンドの終わりで通常の方法で矢取りと採点を行い、約15分に相当する数エンドを選手に与えるもので、常識的に行う必要がある。  

   弦切れやノック破損のような短時間で修理できる弓具故障は、修理完了後出来るだけ速やかに、残りの矢の行射を行う。

   トイレ休憩は医療問題とは見なさないが、規則ではこの様なことが必要であれば、他の選手に採点を依頼するとか行射の順番を替わってもらうことを許可している。 もし、問題が全体的なものであれば、DOSは常識を持って処理すること。

   筋肉痛や傷害は医療問題と見なさない。 競技会に適応した体力を持つことは、選手の責任である。

   最近、競技中に医学上の問題が予期せず発生した場合は、これを認めるように競技規則が変更された。 医療担当者が問題の程度と介添えなしに競技を続行できるかを見極める。 しかし、行射できなかった矢の行射は、15分を超えてはならない (訳者註:全ア連の競技規則とは表現が異なります)。 競技規則第208条第2項―(3)を参照。

   注意 : この医療問題の規則はマッチプレイでは適用されない   

...             的中孔の印
多くの審判員や選手は、的面の得点帯内側及び外側にある的中孔に印を付けねばならないと考えている。 ある人たちは、マットや的台の木の部分にある的中孔も印を付けている。 
FITA競技規則では、“全ての矢の的中孔に印がされており、1個の印のない的中孔が確認された場合は、跳ね返り矢は的面に当たった的中孔に従って採点する。”と記述している。
的面とは、的面の得点帯の外側ではない。
的中孔の印付けは審判の責任ではない。 競技規則及びこのガイドブックでは、特別な状況のときにのみ、審判員が印付けをすることを求めている。 しかし、貴方が的面の交換や得点を調べるときに印の無い的中孔を発見したら、それに印を付け、選手にはその義務があることを選手に注意し、チーム・キャプテンに印を付けた事を告げるべきである。 しばしば、ある選手が印を付け、別の選手が矢を抜くなど、選手達は仕事を分担している。 審判員がこのような行動をとることにより、的中孔に印を付けることが必要であると、選手は自覚して行くだろう。
経験のある選手でさえ、正しく印を付けていないことに驚かされる。 5mm以下の短い線で、十字に印をつけるよう指導すること。 いずれにしても、印付けは選手の責任であって、審判員の責任ではない。 

5.5.4.             スコアーカードの訂正

   点数の書き間違え

   999755 が 99555 と記入された。

   
1.点数は審判員のみが訂正できる。
2.元の間違った数字は決して消してはならないし、その上に書いてはならない。
3.審判員は間違って書かれた点数に斜線を引き、その空いた場所に正しい点数を書き込む。  
4.審判員は赤ペンで訂正を行う。
5.判員は合計点数の訂正を行う必要はない。 素点のみが対象である。
6.審判員はスコアーカード上に審判員のサインをする。

  
矢の素点の変更は、的面にある矢が触られていない時及び引き抜かれていないときにのみ行うことが出来る。

もし、ある選手の矢の得点が他の選手のスコアーカードに誤って記入された場合は、その訂正は矢の点数の変更ではない。 点数は明白である。 もし、両選手が行射した矢の得点が相手方のスコアーカードに記入されたことに同意すれば、矢が引き抜かれた後でも、審判員はこれを訂正することができる。

もし、選手が同意しなければ、得点は記載されたままとなる。 この場合、審判員は選手に上訴委員会に提訴できることを教えるのがよい。


点数が降順に記入されていない 

999775 が 997975 と記入された。

     

   矢の素点が降順でない場合は、下線を引き審判員はサインをする。 訂正は常に赤ペンで行う。
  
アウトドアー・ターゲット及びフィールド・アーチェリーでの特別な記入方法   
インナー10(フィールド・アーチェリーではインナー5)は 
X、ミスは M と記入する。

     

    スコアーカードの下欄にする選手のサインは、採点係が行った合計点数に同意したことではなく、記入された矢の各素点に同意したことを意味する。 合計が無いとか間違っていると言う理由でサインを拒否した場合は、サインの意味を説明すること。 

合計点数の間違いは、集計係りが調べ、訂正することになる。

 

合計点の誤り 集計係が起こした計算ミスは、集計係が調べて訂正する。 しかし、集計システムが新たな誤りを起こさないよう確認しておくのは賢明なことである。 

時には、競技主催者は(各的に2名の採点者を配置)ダブルスコアリング方式を採用する事がある。 採点が行われている時に、ダブルチェックを行うためである。 時には、このダブルチェックが正しく行われず、その距離の行射終了後や数エンド後にダブルチェックが行われ、2組のスコアーカードに記載された矢の素点に相違が発見されることがある。 矢の正しい素点を確実に証明するものが無ければ、低い方の得点が有効となる。


5.5.5.             行射開始前、終了後の行射

   行射開始前に選手は弓を上げることは許されていないので、行射開始合図前の行射は稀である。

しばしば遭遇するのは、行射終了時で、合図と同時かそれに非常に近いときの行射である。 (最初の音響合図が時間の終了を示す。)

判定をする前に、行射時間がその行射以前に確実に終了していたことを確認しておかねばならない。 選手が合図を聞く前に、貴方が合図を聞いていたかも知れないと言う事も考慮に入れねばならない。 もし貴方が選手よりスピーカの近くにいれば、このような事が発生するのである。 又、この場合、DOSはこの状況をよく見ている筈なので、DOSと相談することを薦める。

   もし、矢が開始或いは終了合図と同時に行射されたのなら、選手に有利なように判定すべきである。

   矢が信号の前或いは後で発射された場合は、そのエンドの一番高得点の矢の点数が無効となる。 3射或いは6射行射の各矢の得点を、スコアーカードに記入する。 審判員は赤ペンで得点を訂正し署名する。 無効となった矢の点数はスコアーカードから消してはならない。 (時に、3射の場合に2本、或いは6射の場合に5本の矢の得点が記入されている事があるが、これは間違いである。) 無効になった矢の点数は審判員が赤で斜線をして残しておかねばならない。 矢が時間外に行射されたと言う審判員の決定は、上訴委員会に提訴される可能性がある。 上訴委員が選手の訴えを認めた場合、無効となった矢の得点は元に戻される事になる。

特定の矢の採点に携わっている審判員がその矢を明確に識別できる時(例えばマッチプレイや時間外処理で矢を行射)は、その矢の点数が無効となる。  
  
5.5.6.             音響信号   

   競技規則では、音響信号と信号灯との間に差があった場合は、音響信号が正式の信号であると記述している。

   もし、その差が1秒近辺であれば、音響信号が正しいと考えられる。 もし信号を鳴らす人が、不注意か誰かに話し掛けられて、数秒間も信号を鳴らさなかった場合は、常識をもって処理すべきである。 この場合の貴方のとるべき処置は、どちらの信号が正しいかを確認し、選手が有利になるように決定すべきである。 選手は役員の過ちのために、減点されてはならない。 この事は、そのエンドの行射終了時間前に、信号が出された場合は、さらに重要である。


5.5.7.             時間警告信号

   行射時間注意信号(黄ライト、等)が誤作動し、正しい行射時間終了前に選手が最後の矢を行射出来なかった場合の取扱について、審判員の間でしばしば議論されてきた。 

   選手は行射終了30秒前に、正確な注意信号を得る権利があるとの公式見解が発表された (2001年12月)。 例えば行射時間(2分或いは4分)の信号が正しくても選手に与えられた信号が30秒以下であれば、射ち残した矢1本につき40秒が選手に与えられる。 

しかし、他の時間表示装置が正しく作動しており、これを選手が容易に見る事が出来た場合(信号灯が誤作動であっても、カウントダウン時計が正常に作動しており、これを容易に見る事ができた場合)は、選手に射ち残した矢の行射は認められない。

   現場の状況に応じた適切な判断が必要で、疑わしい時には、選手に有利な判定をするべきである。

   しかし、40秒の1射のエンドでは、10秒後に行射終了30秒前の注意信号を出す必要はない。 コーチが時間内に行射終了するよう選手を援助すべきである。


5.5.8.             標的での審判員の位置   

   矢取り合図の後、審判員は1グループとして一直線となって標的に進む。 受け持ち的の約10m手前の位置に留まる。

   選手に呼ばれ、作業を終えたら、標的に向かって10mの元の位置に戻る。

   全選手が採点を終え、審判員が並んでいる位置を通過したら、審判員は標的の後ろに誰も残っていないことを確認し、担当している標的には誰も居ず、安全であることを確認する。 もし貴方の両側いずれかの標的を受け持っている審判員が忙しく、自分の受け持ち以外の的で作業が要求されていれば、手助けをして、全作業を終え、元の決められた審判の位置に戻る。 

   2人で同一的を行射するオリンピックのエリミネーションでは、採点を監視することはない。 しかし、1人で1的を行射する個人戦や団体戦では、的面や矢が触れられていないことを確認するために、採点を監視することが求められる。 時間を節約するために、審判員は選手よりも先に、標的に到着しなければならない。


5.5.9.             その他の作業   

   標的での事故 − 的面、マットの交換やスコアーカードの問題等は、標的の近くにいる審判員の位置から、決められた方法でDOSに合図を送る。 

   DOSは選手に、作業のため競技が短時間遅れることを伝える。

   全ての事故が標的の位置から合図されるのではない。 風の強い日は、的紙が緩むことがある。 もしエンド最中に、的紙が風で緩みその一端が得点帯を覆い隠すことがあれば、その的を行射している選手は、他の選手が行射を終了するまで行射を中止する。 審判員はDOSに的紙に問題が発生したことを知らせ、選手と共に標的に進み、審判員のノートに矢の得点を記録し、的中孔に印を付け、矢を選手に抜かせ、的面を固定する。 引き抜いた矢は標的の後ろに置く。 審判員は選手と共に射線に戻り、DOSにその選手の射ち残した矢の数を知らせる。 選手は射ち残した矢を行射した後、全選手が矢取りを行う。


5.5.10.     射線上の望遠鏡   

   3人立ちの行射では、選手が射線を離れるときは、望遠鏡を射線上に残しておいてはならない。 しかし選手にとって、毎エンド、望遠鏡を射線の限られた場所に設置するのは、面倒なことでもあるので、審判員は望遠鏡を射線に置かないよう要求してはならない。 2人立ちで行射する時は、1つの望遠鏡を他の選手と共用する場合以外は、望遠鏡を射線から後退させねばならない。 他の選手の邪魔にならない限り、エンドとエンドの間では望遠鏡を射線に残しておいてもよい。 

   もし、射線上での場所が非常に狭い場合は、審判員の判断で、必要でれば適切な処置を取る。


5.5.11.     3mライン   

   射線前方3mのラインは、何らかの理由で矢を落とした時、選手をより公平に扱うために99年の総会で採用された。 以前問題のあった弓で矢に触れる方法が、固定したラインに置き換わった。

この競技規則は、矢の一部が3mライン域の内側に落ちていれば、矢を行射していないと見なす。 ノックや羽の一部が3mライン内に落ちた場合は、再度行射することを許していない。 もし、ノックがシャフトに付いていて、ノックだけが3mライン内にあれば、再度行射してもよい。 (シャフトの一部と見なす。)

落とした矢の一般的な取扱は、選手が、3mライン以内に矢が落ちていると見たら、制限時間内にもう1本矢を行射する。

   しかし、矢が落ちるのは、往々にして弓具故障(例えばノックの破損)の結果であり、選手は行射を中止して審判員を呼ぶこともある。

   矢が3mライン内か否かを直ちに決めることが困難な場合がしばしば発生する。

   もし、選手が矢は3mライン内にあると思って行射を続けた場合、例えば、マッチ戦では行射を中止できず、そのエンド終了後確認すると矢は3mライン外であることが判明した場合、審判員は射線(選手の位置)から矢の位置を見て判定すべきである。 疑わしい場合は、選手に有利なように判定する。


5.5.12.     射線上のコーチからの指示 

 1999年の総会で、射線に居る選手は、他の選手の邪魔にならない限り、コーチから電子的でない方法で情報を得ることが認められた。 

 これは、喋ったり叫んだりする観戦者を選手の近くに入れる事を認めた結果で、事実上コーチが自国語で選手に情報を与えても、これを制限することは不可能である。

 問題は“どのような時に他の選手の邪魔になるか”である。 標準的に、また過去の経験からして、通常の大きさの声や合図は許容されるべきである。

 競技規則の趣旨は、射線上の選手とコーチ等との会話を許すものではない。 これは容易に他の選手の妨げとなる。 


5.5.13.    電子機器  

   チーム役員同士がウェイティング・ラインの後方で、電子通信機器を使用して相互に連絡しあってよいか、議論されてきた。 そして、これを拡大してウェイティング・ラインの後方での携帯電話の使用について問題が提起されてきた。 現在、これらは全て認められている。 (オリンピックでは、イメージが悪いので不可)


5.5.14.     競技の取消し

   マッチ戦で対戦相手が競技に参加しないか、或いは何らかの理由で行射を中止した場合、そのマッチ戦は取消しとなる。 対戦相手が競技に参加しなかった場合について、競技規則にはこれを取扱う規定がない。 推奨する方法を下記に示す。

   a) 交互行射で、先行を決めるコイントスに対戦相手が参加しなかった場合、参加した選手を勝者とする。 この勝者は次のステージでの競技を待っている間、通常競技場で行射する事は許されない。 近くの練習場で行うこと。
b) 予選(エリミネーション・ステージ)で行射が開始されても対戦相手が現れない場合は、審判員はこの時点では介入できない。 しかし、第1エンドが終わり、このエンド中その組の1選手だけが行射し射場に残っていたら、その選手を勝者とする。 もし、その勝者が望むのなら、その後も標的に向かって行射を続行してもよい。 ただし、スコアーカードには点数を記録しない。

      

 5.6.   フィールド・アーチェリー審判手順
   
.. 時間制限の適用

   一般的に言って、フィールド競技では時間の計測は行って来なかった。 時間を計るのであれば、公式の時間計測員が、各グループに同伴してすべての行射を計測しなければならない。 しかし非常に行射の遅い選手が妨げとなり、競技を遅延させる原因となったことがあったので、数年前にこの行射時間の規則を導入しなければならなくなった。 貴方は審判員として、貴方が配置されている的を通過する全ての選手の時間を計ると考えてはならない。 この規則は、競技を遅延させている遅い選手やグループを管理統制するためのものである。 審判員のこの権限を良識を持って使用すべきである。

FITAの競技規則は、クォリフィケーション及びエリミネーションで、選手又はそのグループが競技中の他の選手やグループにとって、不当に遅れを生じさせている場合、審判員は当該選手又はグループに時間を計ることを告げた後、その選手やグループの行射時間を、競技のそのステージ中は予告なしに計測することが出来る。 

競技規則に従って時間を計る必要が生じた場合、次の手順に従って行う。

もし4分以上経過している行射の遅い選手が認められたら、選手は警告を受け、審判員は警告を与えた時間と的番号をスコアーカードに書き、サインをする。 もしその選手の時間超過が2回目であれば、 審判員は前回の警告を調べ、その選手のその的での最高点を削除する。 このことをスコアーカードに記入する。 その後の違反はその選手のその的での最高得点を削除する。 通常、フィールドにいる審判員はどの選手の行射が遅く、不当に競技を遅らせていることを知っているものである。

競技の結果同点となった場合、これらの矢の得点は的面を外し、得点を失ったものと同様に扱う。

   選手への口頭での注意は、同じ選手に再度の口頭注意を防ぐため、無線で他の審判員に連絡する。 無線連絡が不可能な場合は、スコアーカードに口頭で注意した事を記入する。 即ち、スコアーカードに“口頭注意”と“記載した注意”及び計測した時間、的番号、審判員サインをすることを競技開始前に定めておく。

時間制限は選手がポストに立った時から計測を始める。 的が射てる状態になり次第、選手はポストに立たねばならない。 ここでの重要なことは、ポストに立つ前に距離や地形を判断する時間を選手に与えないことである。 この様な場合、選手に行射ポストに立つよう注意し、審判員は選手が無理なくポストに立つことができたと判断した時から時間計測を始める。 しかし、選手が急な坂を登ってポストにきた場合など、呼吸を整えるために若干の時間を与えてもよい。

時間警告は、競技の次のステージには持ち越さない。

   決勝戦では、ターゲット・アーチェリーと似たような方法で時間を計測する。


5.6.2.              距離の測定
総会では、選手が距離を測るために自分の弓具を用いることを許していない。
チーム・キャプテン会議で注意しておくのが賢明である。

FITA審判委員会はフィールド・アーチェリーで許容されるものとされないものについて、付録8..JGに幾つかの例を示している。 更に、2個のサイト・スケールの使用に関する競技解釈(2002年2月)も参照にすること。 距離計に関する一般的な質問に対する回答(FITA情報2002−2:本ホームページに掲載)参照する事。

   付録8.8の“アンマークド・フィールド・ラウンドで許可されるものとされないもの”を参照。

5.6.3.             弓具故障   
選手が通常コースに携行していない部品の交換が必要な重大な弓具故障が発生したら、次のような手順をとることを薦める。
    
・1 弓具故障が知らされたら、審判員は本部又はその近くにいるチーム・キャプテンに、無線で交換部品を選手に届けるよう依頼する。 組織委員はこの射場に詳しい役員を同行させる。 これは安全と時間の節約のためである。

・2 もしチーム・キャプテンかそれに相当する人がいない場合は、審判員がその選手に付き添って部品を取りに行く。 時間制限について注意しておく。 
・3 弓具故障を起こしたグループは、片側により、後続のグループを行射させ通過させる。
・4 もし、この選手が30分以内に修理を終えることが出来ず、的に戻らない場合は、このグループの他の選手は行射を終えたグループの次に入ってそのラウンドの行射を続ける。    
・5 弓具故障を起こした選手は、修理後何時でもこのグループに合流し行射することができるが、行射出来なかった矢の得点は失うことになる。
   

上記のような遅延に対する決定は、その的の担当審判員の責任で、常識を用いなければならい。 審判員は、選手が携行していなければならないリカーブ・ボーの弦の破損や矢の不足に対しては、競技を中断してはならない。 (コンパウンド・ボーでは弦やケーブルの破損は、重大故障であり選手は弓の交換を希望するであろう。)

傷害や病気に関しても、ターゲット・アーチェリーと同様にフィールド競技にも適用される。 ただし、フィールドでは30分である。


5.6.4.             得点の訂正   
ターゲット競技とは異なり、フィールド競技では、もしスコアーカードに誤りがあれば、選手自身がスコアーカード上の矢の得点を変更することが許されている。

この場合、その的の全選手によるサインが必要である。

しかし、もしそのポストに審判員がいれば、当然その審判員が訂正を行う。

フィールド競技ではスコアラーはいないので、そのグループの選手2名が点数を記入するが、しばしば2枚のスコアーカードの間に相違があると言う問題に直面する。 このダブル・スコアリングは、各選手が矢を抜き取る前に各人の行射した矢の得点とスコアーカードに記入された数字が正しいことを確認しなければならない。

しかし、これが確実に行はれていないことがある。 
FITA審判委員会では、低いほうの点数が正式と決定している。 この他に解決方法は見当たらない。 競技前に、選手にこのことを徹底しておく事は非常に重要なことである。 そうしておけば、2枚のスコアーカードの点数に相違が発生しても抗議はされないであろう。


5.6.5.             セカンド・コール 
ターゲット・アーチェリーとは異なり、矢の素点は一人の審判員の決定が最終的なものとなる。 上記ガイドラインの . の忠実な適用が大切である。


5.6.6.             貫通矢、跳ね返り矢、等   
処理の方法はターゲット・アーチェリーとは異なる。 競技規則(
2002~2005)第411条第8及び第9項を参照のこと。


5.6.7.             双眼鏡の使用

   距離計が内蔵されていない限り、選手は随時使用できる。

 
5.6.8.             行射位置   
行射ポストの周囲の状況が悪い場合の行射位置について、しばしば議論されてきた。現在の競技規則は、選手は行射ポストの横及び後ろに半径1m以内の範囲(半円)に行射位置を定めることを認めている。 これも常識的に判断し適用すべきである。


第6章    決勝戦

6.3.2.             団体戦審判員職務

6.3.2.1.   ライン・ジャッジの職務
団体戦でのライン・ジャッジの任務は個人戦マッチ・プレイのライン・ジャッジの任務とは、大いに異なる。 
交互行射の団体戦のディスク・トスの方法は、個人戦のマッチ・プレイの方法と同じである。 
しかし、各エンドでの行射は、得点の低いチームが先に開始するので、団体戦では行射の順番を自動的に交代しない。 もし、同点であれば、先に行射をしていたチームが次のエンドも先に行射する。

シューティング・ライン後方1mにラインを引く。 各チームの場所は3m幅で、その外側にコーチ用のボックスの線を作る。 

団体戦での軽度の違反は時間ペナルティとなるので、審判員はチームの間のマークされた場所に位置することが必要となる。 審判員はそのチームのコーチと互いに見える位置にいる。 審判員は両チームが見えるように、1mラインから1歩下がった位置に立つ。 

(審判委員会は、マッチ戦では両チームに対して同じ判断を下す事ができるようにするために、各マッチに対して審判員を1名だけ配置するよう薦めている。 この設定はオリンピック等では報道機関に対する“ショー的印象”を考え、若干異なることがある。)

もし、下記に示す軽度の違反があった場合は、審判員は黄色のカードを示し、1mラインに進み、そのチームの名前を告げる。 その選手は1mラインの後方に戻って、再度前進を開始するか、或いは未だ行射していない他の選手と交代しなければならない。
もし、選手が1mラインに後退しないで行射を開始した場合、審判員は最高得点が削除される重大違反を意味する赤カードを示す。 そのエンドが終了したら、審判員は採点に参加する。

ペナルティ・カードは明らかに“不安”を感じさせるような見える場所に持っていてはならず、背後に隠し持っているべきである。 カードを示す場合は、問題のチームのコーチに見えるようにし、その選手に告げてはならい。 黄色カードに加えて、射線の前方に黄色の信号灯を設け、審判員が点灯してもよい。

チームは4名で構成してもよい。 ただし、3名の選手のみがそのエンドを行射することができる。 つまりエンドの間で、選手を交代してもよい。 行射しない選手は、コーチ・ボックスの背後(或いは特別に用意されたボックス)で待機する。

身体に傷害のある選手はエンド中は射線に留まっていてよい。 4番目の選手が身体傷害のある選手の場合は、コーチ・ボックスの前で待機する。  

  

6.3.2.2.   違反

    下記のような違反が発生する事がある。

  軽度の違反:
1. 1mラインを超える時が早すぎる(行射開始の合図前或いはそのチームの他の選手が1mラインの後方に戻る前)。
2. 選手が射線に立つ前に、矢をクイバーから抜いて、射線に向かって移動。

審判員は黄色のカードを掲げる。 選手は1mラインの後方に戻り再度やり直す(或いは別の選手と交代する)。

重度の違反:
1. 行射時間終了の合図の後で、選手が矢を行射。
2. あるエンド中に規定の本数以上の矢を行射。
3. 黄色のカードを示された選手が1mラインの後方に戻らないで、矢を行射。


審判員は赤色のカードを掲げ、これは重大違反であり、そのチームのそのエンド中の最高得点(或いは矢が採点係りの審判員によって特定されれば、その矢の得点)を削除することを示す。 もし、このような事が発生すれば、正しく採点されるようブライドに居る審判(オリンピック・システム)に連絡する。 インドアーでは、ライン審判が採点に参加する。

重大な違反:

   各選手がそのエンド中に規定の本数の矢を行射しなかった。(例えば、9射の競技で、4本、3本、2本と各選手が行射した。)
これは故意に規則を破ろうとしたもので、重大な違反であり、そのチームのそのエンドでの最高点が削除されることを示す為に、審判員は赤色のカードを掲げる。
1mラインの管理は審判員の重要な任務の一部であるが、余り厳格であり過ぎてはならない。審判員が行動を起こす必要がる場合、違反が充分明白でなければならない。 即ち、両選手共に少なくとも1本の足が、1mラインの内側にあること。
選手が行射するために前進し、射線を両足で跨ぐ前に、矢のポイントがクイバーの外に出たときは、矢の取り出しが早すぎたと判断する。 選手は選手ボックスで矢のポイントを点検することもあるだろう。 しかし、1mラインを超える時に矢がクイバーの中にあれば、問題ではない。 選手が行射後に弓を降し、矢をクイバーから出したままで1mラインを超えても、同様にこれを問題としない。 9本の矢が時間内に行射されていれば、3分の制限時間後に射線から後退し、1mラインを超えても同様に問題とはしない。 常識的に処理すること。

団体戦では、コーチにも注意すること。 競技規則は選手の近くにいるコーチの動きも規制している。 コーチは選手エリアの片側にあるボックス内に居なければならない。
コーチは、そのチームが行射中、手持ちの双眼鏡を使用することができる。 チームの選手が行射中はコーチ・ボックス内か、ウェイティグ・ライン後方の選手の休憩場所にいなければならない。 しかし、コーチはコーチ・ボックス内からのみ、選手にコーチできる。 コーチは採点や矢取りの間の休憩時間中はコーチ・ボックスを離れてもよいが、行射開始時にはコーチ・ボックスか或いは選手の定められた場所に戻らなければならない。

もし、コーチがこの規制に従わなかったら、審判員は穏やかにそのコーチのところに行き、信号灯か、コーチ・ボックスを指差す。 違反が2度目の場合は、審判員はそのエンドの終了か、選手の行射終了を待って、そのコーチのところに行き、直ちにコーチ・ボックスを離れ、そのマッチ中は選手のウェイティング・ライン後方の休憩場所に留まるよう警告する。 コーチ・ボックスに入る事を禁止された後に、そのコーチが行射場所に戻った場合は、審判員はそのコーチに対してそれ以後その日は競技会場に入る事を禁止する。  

   

第8章    付録

8.8       アンマークドラウンドで許可されるもの、されないもの
FITAフィールドではアンマークドのみ、マークドのみ、或いは両者組合せのラウンドの競技がある。 また、国内競技会では、扇形や歩寄りの行射を行う事もできる。 
歩寄りを行う場合は、競技規則に従い、的面の大きさに対応した正しい距離で、正しい矢の本数を行射する。 しかし、
FITA
選手権大会のクォリフィケーション・ラウンドではマークドとアンマークドそれぞれ1ラウンドづつで、エリミネーション・ラウンドではマークドとアンマークド的の組合せである。
このような組合せに変化がある理由は、
FITA
フィールド選手はマークドとアンマークド的の組合せを好むことが一因となっている。 また或る国では歩寄りや扇形のような“昔のよき時代”の行射を好む人がいる一方でマークド的のみを好む人がいるからである。
大多数の人達がアンマークド的の行射を好むので、アンマークド的の競技規則では、単純で素人的な発想ではあるが、如何なる距離測定手段の使用も認めないとした。 これを少しでも認めると更に複雑なものが次々と出てくるであろう。   

しかし、選手は“フレーミング”とか“比較”と呼ばれる技術を使用している事を知っている。 我々は競技を公平で平等にするために、この方法をFITAホームページに掲載してこの技術を修得することを薦めている。     
一般的に言
って、この競技規則の趣旨は、アンマークド・ラウンドでは距離を測定するもの無しに行射することである。 しかし、弓具に何物も付加しないで、経験的に又は練習でその弓具を使って距離を推測する方法を修得している人は、その方法で距離を推測してもよい。 これは選手に対して平等であり、誰でも修得できるものであるから、“だまし”とは言うよりは“技術”と考える。
基本的に言って、“目盛”から距離を読むのは距離計と考え、標準の弓具をマットレスや的面と比較して距離を推測するのは技術と考える。
もし、“フレーミング”手法を使うのなら、経験と練習から得た技術を使うべきで、競技規則を逸脱してはならない。 弓具に付加物を付けたり、サイトと的面の大きさの関係を書いたノートを持っていると、これは違反であり、認められない。
規則を曲げるとはどう言うことであろうか? 規則を曲げる人は規則を遵守させようとする人より、時には賢明である。 下記は完全ではないかも知れないが、審判員と選手のための例である。 


アンマークド・ラウンドで許可されないと考えられるもの:
サイト、弓或いはノートのいずれかに、個人用のサイト・スケールを複数持っていると、そのサイトを距離測定装置として使用し、そのスケールで距離を測り、距離を読もうとしていると考える。 これは合法的なことではない。 もし、取り付けられているサイト・バー上の目盛が行射する時のサイト・セッティングと異なる場合は、サイト・スケールをもう1個持っていることになり問題となる。 審判員と選手はこの事に注意すべきである!
もし、サイトで異なったセットアップのために複数の印が有り、将来使用するためにこれを保持しておきたい場合は、テープでこれをカバーしておけば問題はない。

注意: 最近の競技規則の解釈では、選手のサイト又は弓具に製造業者固有の目盛の他に、個人用のサイトスケールを1個つけることが許されている。

行射する前に、弓を2回以上繰り返して上げ下げしている場合は、この選手は距離を測っている証拠である。 このような動作は規則に違反している。 恐らく時間を掛けすぎ、一緒に競技している他の選手に迷惑となっているだろう。 
的面の寸法と比較できるようなプラスティックの羽等を弓具に取り付けていたら、これは明らかに規則違反である。標準的な弓の1部を使うのは差し支えない。 一般的に言って、距離を測る意図で、弓具に手を加えてはならない。

次のサイトは許可されない。
サイトに十文字の線と十文字の線上に1本又はそれ以上の線を持ったもの。
2個以上の円を持ったもの。
どちらの方向にも2本以上の線を持ったもの。円とそれを通っている十文字の線を持っているもの。    
サイトに付加物を着けたもの、或いは弓のウインドウ部分に弓の通常の一部分でない線や点が付いているもの。


ここに、許可されないサイト或いはスコープの例を示す。

                                                                                                            a) 円を貫通している十文字               

   b) 点と別の線

   c) 長さの異なる線を持った
  十文字で、
線の端がサイトリング
  に達していない。

d) 目盛のある十文字
c) サイトリングの上端に
取り付けられた羽

親指や物差し等を自分の前に翳して計ることは許可されない。
サイトと矢等或いは的面の関係を示した図やスケッチを書いたノートを、所持する事は認められない。 練習の時 に持参してもよいが、競技場に持って来てはならない。


同様に、ベアーボーの選手はマークのついたタブの絵や図又はそのマークとタブの関係を示した資料を持参することは禁止されている。 練習時に所持していてもよいが、競技場に持って来てはならない。
ベアーボー選手は、もし弓の窓の部分に照準や距離計測の助けとなるようなマークが有れば、前もってテープでそのようなマークを隠しておくこと。 鮮明でないマークやカモフラージュの模様は通常問題があるとは考えない。
射ち上げや射ち降しの角度とサイトマークの関係を示すようなノートや目盛は許可されない。 同様に角度を測る如何なる装置も許可されない。
コース内では、無線や携帯電話の使用は許されない。
双眼鏡やその他の光学機器はどのような種類であっても目盛があってはならないし、距離を計測する装置が内蔵されていてはならない。
又、フィールド・コース内では、如何なる種類の電子的な記憶装置も、その使用は許可されない。

使用が許可されるもの:

1個のサイトポイント、リング或いは十文字、

1個の円と点が有るもの。

点やボールのある通常のサイトと同様と考えられるものは許可される。

下記は使用が認められるサイトやスコープの例である。
a) 点が1個
b) 円が1個
c) 1個の円と点 
d) 1個の円と円外に十文字があり、
   線が端に達している。
e) 点と十文字で、線が端に達し
  ている。
 
その他に、下記のものが許される。
上記の制限範囲内で信用のある製造業者によって作られた標準のサイト。
これは、新しい弓具を買う時、他の選手に公平でかつ出費の節約のためには、考慮すべき点である。
色々な的面の大きさとそれに対する距離等、競技規則から抜書きしたもの。
上記の制限内で、サイトマークに関するノート。
  例えば:
   5m = 2.30
    10m = 2.10
    15m = 2.30
    20m = 2.55
    25m = 2.90  
  等。
付記:
違反をしている選手は、違反をしていること又は違反をしようとしていることを恐らく承知している筈である。 我々は、選手が規則違反の可能性があるのなら、いつでも審判員に質問できるのだから、規則違反をしていることに関しては、弁解の余地はないと考える。

FITA競技会を公平に行うために、弓具、行射時間や規則の適用に関して、違反であると感じたり発見した選手は、審判に報告することが要求される。 審判員は選手がより良く、より公平な競技を行うために競技場に居るのだから、見つけた違反を報告しない事は、友好的でも、礼儀正しくでも、またはスーポツ精神に則る事でもない。